出逢い  〜第六章〜そして始まる


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「ねぇ・・私のお願いも聞いてくれる?・・・」
ティッシュで汚れを処理した後、枕をクッション代わりにベッドに上半身を起こし喉の渇きを潤してる時だった。
もちろん、愛する麗子の望みならば叶えてあげたいと、
「何?・・もちろん聞いてあげるよ」
と、当然答える。
「私、来年卒業じゃない?・・卒業したら・・・」
ちょっと口篭るが、すぐに気を取り直しはっきりした口調で
「卒業したら一緒に暮らさない?」
と、同棲を望んできた。
私はちょっとだけ考えたが、あまり深く考えずに
「いいよ、なんだったら今日からでもいい位だ」
と、調子いい発言をする。
反抗期ということもあり、家を出て親の顔を見なくて済むのもいい程度に、軽く考えていたのも事実だが、麗子と一緒に暮らしたい気持ちは真面目だった。
「ほんとに?・・じゃあ、早速色々やらなきゃいけないこともあるわね」
麗子はすっかりその気で、すごく嬉しそうだ。
私は麗子の嬉しそうな顔を見てると麗子を幸せにしなくてはいけない気持ちを強く感じた。
それからの麗子の行動は迅速だった。
さすがは関西一の大企業家の娘らしくテキパキと電話で話をする姿は、さっきまで中学生にリードされ恥ずかしい声を上げていた女とは別人のようだ。
何ヶ所かに電話を掛け終えると
「良し、これでOK」
と、うなずき納得の表情を見せる。
次の瞬間
「ねぇ、パパにも会ってくれるでしょう?明日来られるって」
と、甘えた表情に一変する。
娘を溺愛する父親は、早速上京して私を品定めに来るのか?
「もちろん、でも怖い人じゃない?・・いきなり娘を傷物にしやがってとか?」
と、おどけて聞くが
「うぅん、私が決めた人なら大丈夫だろうって・・・」
真顔で答え
「だから、まず一番に婚約者に挨拶したいって・・・」
『婚約者!?俺まだ中学生だぜ!?』
もちろん、麗子みたいに美人でスタイル抜群、しかも、超美髪なのだから文句があるはずは無いのだが、あまりに急な展開に戸惑いは隠せない。
麗子は私の戸惑いを察知したのか、悲しげな表情で
「やっぱり、いきなり父親なんて・・しかも婚約なんて早過ぎだよね・・・」
寂しげな呟きに私の中で何かが弾けた。
「いやっ、遅かれ早かれ麗子とは結婚するんだから明日で全然構わないよ・・それよりごめん・・・俺・・麗子に一瞬でも寂しい思いさせちゃって・・・」
これからは
『麗子を守らなくてはいけない』
と、決めたはずなのに不安にさせてしまった自分が情けなかった。
しかし、感傷に浸っている暇は無い。
これから先はあっという間だった。
全て麗子の実家が手回しをしていたこともあり色んなことが驚くほどすんなりと決まっていった。
その日の内に麗子は私の両親とも挨拶を済まし
「不束者ですがよろしくお願いします」
と、麗子が涙を流した時にはさすがに私も感動と同時に身が引き締まる思いがした。
新居についても、麗子の父親の持つマンションの一部屋に既に上質な新品の家財道具が揃えられている。
私は改めてこれらのことを半日あまりでしてのける麗子の実家の財力に恐れ入るばかりだった。

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